2010年8月4日水曜日

Paradies Schweiz (Museum für Gestaltung)

すでに10日ほど前になるけど、Museum für Gestaltungで特別展を見てきた。スイス人は自己イメージをどのようにとらえ、どのように提示してきたのか?を19世紀から現在に至るポスターを通して展示する。展示室は小さかったが見応えがあった。取り上げられていたスイスの自己イメージは3つ。1つめはマッターホルンに代表される山。2つめはスイス国旗の赤字に白の十字。3つめはハイジのような田舎の風俗。

印象に残ったものをいくつか。ミナレット建設禁止住民投票の時のポスターで、建設禁止賛成派はスイスの国旗の上にミサイルのような形状のミナレットが立ち並び、ブルカをまとった女性が前面に描かれたポスターを制作した。かなりインパクトがある。スイス性がミナレットによって脅かされるイメージか。一方反対派はあえてスイスをアピールせず、「スイスの空は、全ての宗教を受け入れる広さがある」と空を広く取り、ポスターの下方に様々な宗教施設の屋根が並ぶデザインにした(なぜか、問題のミナレットはなかった)。

あとエイズ予防のためにコンドームの使用を呼びかけるポスター。ハイジのような素朴ないかにもスイス風衣装をまとった少女が親指にコンドームをはめて、「無しでするの?私無しでやれば」と言っている。リンク先の一番下の列、真ん中のポスター。他のバージョンは特にスイスのイメージは利用していないらしい。スイス=田舎者、というイメージを自虐的に利用しているという解説があった。

20世紀前半、第二次大戦前のポスターは山々の間を走る鉄道、高速道路の未来的イメージと山岳の清浄なるイメージを組み合わせたものがいくつかあった。最新の文明と、自然が同居する未来の楽園というイメージは今でもスイスのイメージとして有効なのではないか。スイスの有名山岳リゾートツェルマットからゴルナーグラートバーンに乗ったが、3000メートルを超える地点まで楽々と連れて行かれて安全なまま別世界を楽しむことができた。目の前に広がる雄大な山々は本物だけれど、そこに至るまでの道、あるいは終点のゴルナーグラート自体はしっかり手が入って骨抜きになっている自然だ。また、ティチーノのハイキングルートも途中何カ所も小さな流れを渡ったが、自然の景観を壊さないようにしつつ、コントロールされていた。すっかり手なずけられた美しい自然を安心して楽しめる、未来の国を実現している希有な場所なんだと思う。

山、スイス国旗、田舎はスイスの全地域共通のイメージであるらしいことを確認したが、スイスに関して最も不思議なのはいわゆる国民としての統合を何によって行った(行っている)のかということである。多くの国でそれは言葉であり、国語の統合に心を砕き中央が認める言語以外を滅ぼしていったのだろうけど、スイスでは公用語が4つもあり、言語による統合は全く行われていない。この展覧会で取り上げられたようなスイスイメージが寄与している部分もあるのだろうか。


美術館ではもう一つ別の展示をやっていてそれも見た。Charlotte Perriandという女性に関する展示で誰か全く知らなかったがコルビジェと仕事をしていた人らしい。二度来日している。1930年代に政治的な活動にコミットしていた頃の作品が高校の文化祭のクラス発表を思い出させるコラージュで、コラージュしたくなった。椅子、写真の展示、本人が語るビデオの上映もあり興味がある人にはたまらない展示ではないかと思う。

博物館自体もレトロな建物で、魅力がある。50年代に建てられた大学の校舎のよう。なぜかフロアマップがないのだが、それもまたよし。なかなかに快適そうなカフェも併設されている。

Museum für Gestaltung
Ausstellungsstr. 60
CH-8005 Zürich


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