2011年7月20日水曜日

Macbeth

六月半ばから二週間スペインに行って帰ってきてからというもの、ずっと調子が出ない。と言うか、ふだんから調子が出ている時の方が少ないのだけどもここ数日は特に。やることはいろいろとあるのだが。そもそも修論提出まで二ヶ月を切ったのにこのていたらくはまずい。

というわけでいろいろすべきことはあるけど気が乗らないのでひとまず先週見たMacbethの感想を書く。

Macbethはオックスフォードでも有数のお金持ち伝統カレッジ、トリニティが会場だったのでぜひ見たかった。しかし会場に着いてみると庭に立派な劇場が作られているというわけではなく、敷地の中だけど脇の小さな林の中に無理矢理押し込んで作った、というような感じだった。がっかりしたけど、中世スコットランドの田舎にいる感じがしてよかったかも。小雨が時々ぱらつく肌寒い日で、貸し出し毛布(1ポンド)を幕間の時に借りた。飲物も売っていて、温かいコーヒーや紅茶が飲める。

Oxford Theatre Guildという劇団の出し物だったのだが、この劇団は市民劇団ぽい感じで、普段は仕事を持っている、オックスフォード近郊の人でやっているようだった。そのためかちょっと素人っぽい?と思うこともあったのだけど、日が暮れてからはどんどん雰囲気が出てきて引き込まれた。

この演出で変わっているのは魔女が3人ではなく、9人もいるところ。マクベスの悲劇における魔女の役割が大きく、端役はほぼすべて魔女が化けていることになっていた。Wikipediaであらすじをチェックした限りの印象では、魔女3人だと、うまい話に思わず引き込まれて人間の弱さと怖さが露呈してしまう、という話に見えたのだけど、9人版では魔女という超自然的なものの思うがままに操られる哀れな人間たちの悲しさが目立った。ラストも変えてあって、魔女たちの差し金による次なる悲劇が予想される終わり方をする。

魔女が9人もいるのが、学芸会の時に全員出さなきゃいけないから元は3人の役を9人に増やしました、というのを思い出させた。あと明るい間は魔女の服がゴミ袋か給食の白衣みたいに見えたのでかなりいまいちに思ったのだが、暗くなってきてからは白い光る薄い生地を重ねた衣装がいい感じに照明を反射しておどろおどろしくてよかった。全体に、暗くなってからが光の加減とか、周りの木がざわざわと音を立てる怪しさとか、効果的に作用しておもしろかったように思う。土曜日にはマチネーもしてたらしいけどそれはちょっといまいちだったのではないかな…。

英語の劇を見たのもシェイクスピアを見たのも初めてだったけど楽しかった。もっと見たい。シェイクスピアは同じ作品を色んな人が色んな演出しているのが楽しめそうだし特に。筋を知ってても演劇っておもしろいな。むしろ筋を知らないとおもしろくないのか?英語の音を楽しめたのもよかった。魔女たちがMacbeth!と連呼するところではすごい勢いで舌を噛んでて、英語の音の力強さと激しさを耳で聞けた。英語はあまり好きな言語じゃないけど、こうして劇や詩の朗読なんかを楽しめば英語のよさも感じるようになってくるのではないかと思った。不思議なのは、演劇や詩の朗読ってその場にいるとかなり音が飛び込んできてそれだけで満足するのだけど同じものをデータで聞いたり見たりしてもいまいち退屈なことだ。やっぱり生音が一番、というのは音楽よりも、人の話し声で感じる。

未確認生物学

今、Museum of the History of ScienceでEccentricityという特別展を開催中。今日はその関連で、雪男研究者についてのレクチャーがあるということで聞きに行ってきた。

発表者はアメリカのBrian Regalという研究者でいかにもアメリカンという声の張りと身振りの激しさとアメリカンジョークで圧倒された。アメリカンジョークは意外とイギリス人にもうけてたみたい(それか、笑うのが礼儀だと思って笑ってたのか?)。大学のオフィシャルによれば、ダーウィンについての本を書いたり(Creationalistが剽窃したらしい)、テレビに出たり、雑誌に投稿したりとかなり目立った活動している人のようだ。元々進化論を研究しているらしい。さらにCVによれば、大学に入る前は軍隊に8年くらいいたみたい。アメリカでも珍しい経歴だろうか?

テーマはCryptozoology。この単語知らなかったがWikipediaによれば「未確認生物学」のことで、ネッシーとか雪男とか、存在がかなり怪しい未確認生物の研究を指すらしい。Ulisses Aldrovandiから始まってざっと有名な学者の話のあと、チベットで発見されたというイエティの解説があり、本題のGrover Krantzの話をじっくりと約40分ほど。ちなみにUlisses Aldrovandiの仕事は以下のビデオにまとめられているようなものらしい。





Grover Krantz(クランツだと思うけど英語読みはクランズなのかな?)はアメリカの学者で、ずっとビッグフット(サスカッチ)を追っていた。これだけ聞くと怪しいようだがバークレイで学びアカデミックな背景はきちんと持っている。クランツに限らず、ビッグフットの研究者はアマチュアだけではなく大学教育を受けた学者も数多いらしい。クランツはテーマが変わっていたというだけではなくかなりの奇人でもあった。犬が生涯の友で、愛犬が死んだ時には剥製にしようとしたができず、骨格標本を残そうとしたものの愛する友人を切り裂くことが出来ずナイフを手に震えていた。結局犬の死体を地面に埋めて、一年後の真夜中骨だけを掘り出して骨格を残した。亡くなる前にスミソニアン博物館に研究ノートなどを寄贈することにしたが、寄贈の条件は自分の骨格標本と犬の骨格も引き取ること。スミソニアンは引き受け、今は骨を見ることが出来るとか。また、ビッグフットが有名になり、子供からもファンレターがたくさん届いたという。そのファンレターもパワポで見せていた。

レクチャーはわりとクランツのおもしろエピソードを取り出してちょこちょこ解説、という感じだったがあとの質問がかなり盛り上がり、違う方向性の話を聞けた。ビッグフットはアメリカ先住民の間では「毛深いヒト」として認識されていたのが、白人が「類人猿に似たもの」と言い出してから猿として認識するようになったとか、ロシアにもビッグフットを信じている科学者のグループがあるが、彼らはビッグフットを現生人類とは違うヒトの生き残りであると考えているとか。ロシア(といってたけど多分ソ連のことだろう)はイエティ調査を実施しており、それはチベット、中央アジア、ヒマラヤ辺りの紛争地域でイギリスやアメリカがイエティ調査を隠れ蓑に怪しい行動をしているのではないかという警戒のためもあったと。実際、イエティを追っていた学者はアメリカやイギリスの諜報機関と何らかの関わりがあった。あとテネシーでは家にビッグフットが出入りして交流を深め、英語とビッグフット語を互いに教え合っているという話があるらしいがこれの9に書いてあることかな。ロシアにそれを研究しようとしてる人がいるみたい。

最近本を出したばかりだそうで宣伝していた。読みたいけど買うにはけっこうな値段。

2011年7月19日火曜日

Oxford観光情報

有名観光地に住んでいるためお客さんが多く来る。せっかくなので見たところなどをメモしておきたい。特に地元イギリス人と交流があるわけではないので、「地元民だけが知る店」などはわからないが何かの参考になれば。

昨日は観光名所を色々まわった。はずせないのでクライスト・チャーチに行ったが、驚くほど混んでいた。今は観光シーズンな上、夏休みを利用して各国から語学留学の若者が集まってきているかららしい。昨日は日曜日だったからよけいに多かったのだろう。私はハリー・ポッターシリーズを読んでもいないし映画も一本も見ていないのでよくわからないが、クライスト・チャーチの食堂が使われているようだ。

ここからは文句。カレッジの入り口には本日公開されている施設が一覧になっており、昨日はホール(食堂)は公開していないがカテドラルは公開していることになっていた。ところが、中に入ってみると逆であた。ホールは狭いため同時にたくさんの人が入れないためか、まるでディズニーランドのアトラクションのように人が並んでいた。ホールには入れないとなると、他に見るものはカテドラルなのだがそれは開いていない。結局何も見ずに出てきた。クライスト・チャーチは大人一人8ポンド(夏期)なのであまりにもぼったくっているように感じた。とはいえ、一番の目玉カレッジだからカレッジ一つ選ぶとすればここになるのかなあ。ちなみに12月に行ったときは誰もいなかった。

公開しているカレッジで他に昨日行ったのはモードリン・カレッジとニュー・カレッジ。モードリン・カレッジは白い紫陽花と石壁のコントラストが美しかった。広大な庭には鹿もいるし、川沿いの道を散策するのも気分がいい。中にはカフェもあり、川を見ながらお茶できるらしい。ここはガーゴイルでも有名で、妙な顔のやつがいっぱいいる。

ニュー・カレッジは外界から隔絶されたような空間だった。全く21世紀にいる気がしない。ビルも見えないし、電線もない。かつての城壁に囲まれた庭を壁に沿って歩いていても車の音もしない。美しい庭にはいろいろな花が咲き乱れている。こんなとこで勉強していたらかなりの特権気分が味わえるだろうし、ここで過ごす3年だか4年だかの大学生活は一生忘れられないものになるだろうと思った。

ボードリアン図書館のツアーにも参加したのだった。今までミニツアー(30分)には二回参加しているがスタンダード(1時間)は初めて。過去二回はフィンランド人の学生だったが今回はイギリス人のポッシュおばさんだった。もし時間があるならスタンダードの方がいい。特に本好き・図書館好きの人はスタンダードの方がいいと思う。見られる場所も多いし、各場所での説明もミニツアーより詳しい。人数制限がある上当日チケットを買うしかないので、観光シーズンには11時すぎに窓口に走ったほうがいいかも知れない。

昼食はTurf Tavernでサンデイ・ローストを初めて食べた。肉も柔らかく付け合わせの野菜もおいしくて満足。私にはちょうど良かったが、男性には少ないかも。肉の量が少ないしイギリス人にとっては軽い食事なのかも。

お茶はThe Grand Cafeで。日曜は7時までみたいで最後の方は音楽が止まってた。いい店だけどちょっと狭いかな。あと店員がもっと優雅な感じだったらいいのにとちょっと思う…。普通の喫茶店のように気さくだ。ケーキがおいしそうだった(食べてない)。いちおうイングランドで一番古いコーヒーショップらしいけど本当なんだろうか。

晩ご飯はカウリー・ロードの蘭桂坊で食べた。日本のお店のようなPOPが店中にあり、お皿も日本の居酒屋のようなお皿だし、壁の半分が皮だか合成皮革だかのクッションみたいになっているところとか、キティちゃんの風船がなぜかあるところとか、店の中に本棚があって雑誌が読める所とか、日本のお店のようで落ち着けた。傘を預かってくれてあとで出してくれるという心配りもあった。カクテルも各種揃い、食事のあとも飲みつづけることができるしまさに居酒屋のよう。おいしかったが一品8ポンドくらいして中華料理としては高い方ではないかと思う。

写真がなくてつまらないエントリーになってしまった。でも写真を撮るのが嫌いなので今後もこうなってしまうかも。カメラを構えることによってそのときの気分が中断されてしまうのが嫌だ。写真を見ることは好きなので自分で撮った写真がないのはあとあと残念ではあるんだけども。